CLIENT WORK

●京王リッチモンドホテル東京 ディスプレイ作成

ホテルの各階エレベーターホールに飾る、テキスタイルアートを全9階分担当させていただきました。


立地が深川という事で、日本の伝統文化や江戸情緒を継承する地であり、

さらに都心にもほど近く新しい東京ともクロスする街である事から、

建築プランが「日本らしい伝統的な美しさと東京の深みを表現するホテル」との事でした。

コンセプトを踏まえ、シャープな外観とインテリアデザインに沿うように、

日本の文様の中から鱗文様をベースに使い、構成しました。



2階-4階が赤。5階-7階が緑。8階-10階が青。

おおまかに赤、緑、青の色展開になっていますが、それぞれただ単色の濃淡だけ使用しているわけではなく、

何度も打ち合わせした上で複雑に調色し、イメージに合うように組み合わせて染色しています。



センターの縦長のテキスタイル部分が担当した作品で、両サイドは手漉き和紙の壁紙を張り込んだパネルです。

上品で鮮やかかつ深い色を出す為、贅沢にシルク(絹)生地を使用しています。

染色は絵の具と違い、後から消す事が出来ないので(漂白してしまえばその限りではないですが、生地を痛めますし、生地自体の色も変色してしまいます。)

特に絹を使う時は一段と気を遣って慎重に作業を進めます。



インテリアデザイナーさんとデザインを練っている段階で壁紙の色が決定されましたので、サンプルを拝見しに壁紙屋さんのショールームに伺い、全体でまとまりが出る様にそのサンプルを元に染料の色を計画して配合しました。

またこの壁紙というのが、職人さんが1枚1枚作っている手漉きの和紙で、色も毎回全く同じではないという特別なものでしたので、

染める色も何度も試行錯誤して、濃淡も含めて実験をしました。



表面に金箔銀箔が吹き付けてある(これも手仕事との事)煌びやかな壁紙の間に飾られるので、

そのイメージに調和しつつ存在感を出す為にはただ単純な単色のグラデーションだけでは色の厚みが出ず、いくら綺麗な色でも浅く見えてしまうと思ったので、

同じ色の濃淡の中にも少し違う系統の色も使うなどして、

壁面全体としてコンセプトに合うように制作していきました。


赤と緑の壁紙には金箔が使われていましたので、テキスタイルにも金箔を。

青の壁紙には銀箔が使われていましたので、銀箔を貼りこんでいます。

銀箔には、艶のあるものとマットなもの2種類を使用して、さらに奥行きを出しています。

ベースが鱗文様を取り入れた絵というのは共通ですが、

3色×3枚ずつ「同じ色の作品でも1点ものならではの違いが出るようにしたい」とのオーダーでした。

そこで色の配置をずらしたり入れ替えたりして、それぞれ違った仕上がりになるようにデザインしました。


この直線的で幾何学的な要素が、フリーハンドでひとつひとつ作業していく事によって、

手仕事一点ものならではの線の揺らぎや暖かみを帯び、今回のテーマにもマッチするのではないかなと考えました。

箔プリントも、厚くクッキリさせたものからわざと薄く掠れた表情のものまでと幅を持たせ、色と同時にここでも濃淡、絵の立体感を出すようにしています。




今回の染色の手順を簡潔に記しておきます。

まず下地に極薄い色を乗せてから下描きし、それにそって糊でマスキングしていきます。

そして彩色→蒸して染料の定着と糊を剥がす作業。

今度は反転させた部分を染めたいので、1度目と違う箇所をマスキング→糊が乾いたら彩色→蒸し→洗い→色定着。

最後に箔プリント加工。


彩色の際、色はその都度乾かしながら様子を見つつ重ねていきます。それぞれ下の方の濃い色は、3度以上重ねてしっかり発色させています。

グラデーションは特に失敗出来ませんので、息を止める感じで集中します。

他にも細かくあげていくととてもキリがない沢山の手順を踏んでいるんです。


今回の制作は、時間をかけて丁寧に取り組ませていただき、

じっくりと向き合う事が出来ましたので、なかなか綺麗な良い作品に仕上がったのではないかなと思っています。
クライアント様やホテルの方々にも高評価をいただけてホッと致しました。

機会がありましたらご覧頂けると嬉しいです。


京成リッチモンドホテル東京門前仲町

〒135-0048 東京都江東区門前仲町2-8-9

TEL:03(5646)5300

2019年3月19日グランドオープン


●サイゴン系ベトナムカフェ「RURI」ロゴデザイン / ファブリックパネル制作

2015年12月、埼玉県ふじみ野市にOPENしましたカフェ「RURI」(ルーリー)のロゴデザインなどをやらせていただきました。

ruriとはベトナム語で「ささやき声、ひそひそ話」のような、小さい声でおしゃべりするような意味だとのことで、小鳥が寄り添っておしゃべりしているようなデザインに致しました。

オープンに合わせて制作しましたファブリックパネルも、打ち合わせを重ねてデザイン決定、染色を施したまさに1点もののフルオーダーメイドとなっています。技法は型染めと捺染を併用しました。

気持ちの良い空間に飾っていただけて、とても嬉しいです。


●人形劇団ひとみ座公演「テンペスト」 舞台衣装デザイン

2012年3月初演。「ひょっこりひょうたん島」などの作品で知られる、人形劇団「ひとみ座」によるミュージカル人形劇。

人形だけでなく人間も舞台に立つという演出により、人が纏う部分の衣装デザインを担当させていただきました。

人形はキャラクターを演じるのに対して、人間は色んな要素で自在に立ち回り、背景のような役目もするとのことで、植物や海のもののイメージを散りばめたデザインにしています。衣装替えにより、別イメージの衣装もあり。

頭部が大きくデフォルメされた人形デザインに合わせて、ポップな雰囲気に。

 

脚本・演出/藤川和人  人形美術・舞台美術デザイン/高橋ちひろ